「本当のことを言いたいけど、言えない。」
あなたは今、そんな気持ちを抱えながら職場に通っていませんか?
上司の指示に疑問を感じても、「また面倒なことになる」と思って黙っている。理不尽なことを言われても、「波風を立てたくない」と飲み込んでいる。本当は「それは違います」「私にはつらいです」と言いたいのに、言葉が喉のところで止まってしまう。
その沈黙を毎日積み重ねていると、心はどんどん消耗していきます。
今日は、その「言えない」の正体と、自分を守るための向き合い方についてお伝えします。
私自身も、ずっと「言えない人」でした
支援職に就いて最初の数年、私は上司に本当のことをほとんど言えませんでした。
利用者への対応でどうしても納得できないことがあっても、「経験豊富な先輩に意見するなんておこがましい」と思って沈黙していました。仕事量が限界を超えていても、「弱音を吐いたら使えない人と思われる」と怖くて言えなかった。ミスをしても、叱責が怖くて正直に報告できなかったことさえあります。
その結果、あるとき体が動かなくなりました。朝、ベッドから起き上がれない。食欲もない。涙だけが出てくる。
「言えない」を溜め続けることは、心に毒を注入し続けることだったのです。
あれから40年ほどの時間が経過しました。社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師として多くの方の相談を聞いてきた今、私は確信しています。「言えない」状態が長く続くと、必ず心身に影響が出ると。
なぜ私たちは上司に「本当のこと」を言えないのか
「言えない」には、必ず理由があります。根性がないとか、メンタルが弱いとか、そういうことではありません。
理由① 「言ったら何かを失う」という恐怖
評価が下がるかもしれない。仕事を干されるかもしれない。「使いにくいやつ」と思われるかもしれない。チームの雰囲気が悪くなるかもしれない。
こうした「失うことへの恐怖」が、言葉を封じます。これは生存本能に近い反応で、あなたが弱いからではなく、それだけ職場を大事に思っているから起きることです。
「言えない」のは、あなたが繊細で、関係性を大切にしている証拠でもあります。
理由② 過去に「言えた」が裏切られた経験がある
以前に正直に言ったとき、否定された。怒鳴られた。「それで?」と冷たくあしらわれた。そういう経験があると、人は「言っても無駄だ」「言うと傷つく」と学習します。
これは心理学で言う「学習性無力感」に近い状態です。本来は自分を守るための反応なのですが、それが職場でのコミュニケーション全体を閉じてしまう。
あなたが言えないのは、心が壊れているからではなく、心が「もう傷つきたくない」と必死に自分を守っているからなのです。
理由③ 「言っていい」という感覚が育っていない
家庭環境や学校教育の中で、「意見を言うと怒られる」「自分の気持ちより相手に合わせることが正しい」という経験を積んできた方は、大人になっても「自分の気持ちを表現していい」という感覚が薄いことがあります。
「我慢することが美徳」「出る杭は打たれる」という文化の中で育った方にも多く見られます。これは性格の問題ではなく、環境によって形成されたパターンです。
「言えない」を溜め続けると、何が起きるか
「言わなければ穏やかでいられる」と思いがちですが、実際は逆です。
言えない気持ちは消えません。飲み込んだ言葉は体の中に積み重なっていきます。
- モヤモヤが頭から離れない
- 些細なことでイライラするようになる
- 職場のことを考えると気分が重くなる
- 眠れない、または何時間寝ても疲れが取れない
- 「なんで私ばかり」という怒りが湧いてくる
- 職場の人への不信感が強くなる
- 仕事のやる気が完全になくなる
これらは心のSOSサインです。
「言えない」が続くと、やがて心だけでなく体にも症状が出てきます。頭痛、胃痛、動悸、めまい。これらは「もう限界です」という体からのメッセージです。
では、どうすればいいのか——自分を守るための3つのアプローチ
アプローチ① まず「言えない自分」を責めるのをやめる
最初のステップは、「なぜ言えないんだろう、情けない」という自己批判を手放すことです。
言えないのには理由があります。その理由はあなたの弱さではなく、あなたがこれまで生き延びてきた知恵です。まずそこを認めてあげてください。
「私は言えない人間だ」ではなく、「今はまだ言えない状況にある」と捉え直す。これだけで、少し楽になります。
アプローチ② 「言う」以外の出口を作る
上司に直接言えなくても、その気持ちには出口が必要です。
信頼できる人に話す。職場の同僚でも、友人でも、家族でも。「聞いてくれるだけでいい」と伝えて、ただ吐き出す場を持つ。
書き出す。言えなかった言葉を、誰にも見せない日記やメモに書く。頭の中でぐるぐるしていた気持ちが、文字にすることで少し外に出ます。
専門家に話す。産業カウンセラー、EAP(従業員支援プログラム)、外部の相談窓口。職場に知られずに話せる場所を利用する。
出口があるだけで、心への負担がずいぶん違います。
アプローチ③ 「言う練習」を小さくはじめる
いきなり上司への直談判は難しい。でも、小さな「言う」はできるかもしれません。
たとえば——
- 「少し確認させてください」と言ってみる
- 「今日は少し疲れています」と誰かに伝えてみる
- メールで「この件について教えていただけますか」と質問してみる
「言える」体験を少しずつ積み重ねると、少しずつ「言っていいんだ」という感覚が育ちます。
筋肉と同じで、使っていない筋肉はまず小さく動かすことからはじめるのが鉄則です。
「言えない職場」そのものを問い直す視点
ここで一つ、大切なことをお伝えしたいと思います。
もしあなたが「言えない」のが、その職場の雰囲気や上司の態度に原因があるなら——それはあなたを変えるだけでは解決しません。
心理的安全性という言葉があります。「この場では何を言っても否定されない、攻撃されない」という安心感のことです。これが職場にないと、どれだけ個人が努力しても「言える」環境にはなりません。
「言えない職場」で自分を変えようとし続けることで消耗するより、環境そのものを変える選択肢——部署異動、転職、副業、働き方の見直し——も、立派な選択肢の一つです。
「その場で言えるようになること」だけが正解ではありません。その場を離れることも、自分を守る勇気です。
今日からできること
難しいことはいりません。今日はこれだけやってみてください。
- 言えなかったことを紙に書き出す——誰にも見せなくていい。「本当は〇〇って言いたかった」をそのまま書く。
- 「言えない私」を責める言葉を一つやめる——「なんで言えないんだろう」を「今はまだ難しいだけだ」に置き換える。
- 信頼できる誰か一人に「実は…」と話しかけてみる——解決しなくていい。ただ話すだけでいい。
この三つだけで、今日の心の重さは少し変わります。
「助けを求める力」も、あなたの能力です
私は長年の支援の現場で、こんなことを実感してきました。
失敗しても、うまくいかなくても——冷静に自分の状況を見つめられる人は、必ず回復できます。
でもそのためには、心を守ること、きちんと回復する時間を持つことが不可欠です。
そして、一人で抱え込まずに誰かの力を借りること。
これは「弱さ」でも「甘え」でもありません。
自分の状態を正確に把握して、必要な助けを求められること——それ自体が、あなたの大切な能力なのです。
まとめ——あなたの「言えない」には意味がある
上司に本当のことが言えない。それはあなたが弱いからでも、おかしいからでもありません。
傷つくのが怖いから。大切な関係を失いたくないから。これまでそうやって自分を守ってきたから。
でも、その「言えない」を溜め続けることは、確実に心と体を消耗させます。だから、少しずつ出口を作っていきましょう。
あなたの気持ちには、ちゃんと価値があります。言えなくても、その気持ちは本物です。
一人で抱えるのがつらくなったとき、ぜひこのブログにまた来てください。そして、誰かに話したいと思ったときは——
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